老いてますます
パグやフレンチブルドッグなど,鼻の短い犬種(短頭種)では,普段から騒々しい呼吸がみられ,高温多湿時には,換気不良による熱中症を起こすことが知られています。
短頭種には,鼻腔狭窄(鼻の穴がせまいこと),軟口蓋過長(口腔と気道を隔てる襞が長すぎて,気管の入り口を塞いでしまうこと),気管虚脱(気管の膜の部分が気管内に逸脱して,気道を狭くしてしまうこと)が併発することが多く,このため換気能力が低下します。これを短頭種症候群といいます。
Oさん宅のココちゃんは,9歳の雄のパグ。やはり短頭種症候群があり,呼吸は常にガーガーと鳴っています。健診により,前立腺の構造変化も認められたため,良性の前立腺病変に対する治療として去勢手術を,呼吸改善のための処置として,レーザーによる鼻腔拡大と軟口蓋短縮手術を行うことになりました。
レーザーによる手術は,出血がなく,術後の疼痛や腫脹が少ないというメリットがあります。一方,短頭種症候群の犬は,健康な犬と比べると,呼吸管理の点で,麻酔リスクが高いと言えるでしょう。Oさんが,9歳まで処置に踏み切れなかったのも,それが理由でした。
2年後,11歳になったココちゃんが,健診に来院されました。
「先生,手術してもらってから,どこに出かけてもへこたれなくなったわよ。」
と,Oさん。
「以前は,へこたれていたのですか?」
「そう,前はどこに出かけても,すぐに座り込んじゃったのよ。」
少し白内障が始まっているココちゃんですが,若い頃より,元気に運動できるようになったようです。
良かったね,ココちゃん。