エアメール
思いがけないお手紙は,ドイツからのエアメールでした。
Nさん宅のさくらちゃんは,3歳の柴犬。ドイツに転居することになり,そのご相談のために来院されました。転居の予定は2か月後,タイトなスケジュールをきっちりこなさないと,間に合わなくなるかもしれません。
しっかりと日本犬気質のさくらちゃん。性格のきつさはなかなかのものです。鎮静剤を投与後,ぐっすり眠ったところで,まずマイクロチップの挿入を行いました。続いて,狂犬病ワクチンの注射を行いました。
30日後,2回目の狂犬病ワクチン接種を行いました。
10日後,狂犬病の抗体価の測定のため,血液を採取します。元気いっぱいのさくらちゃんには,鎮静剤でしっかり寝た後,採血です。同時に混合ワクチンを接種しました。血液から血清を分離した後,その血清を,Nさんが畜産生物化学安全研究所に抗体価測定を依頼しました。
もし抗体価が低ければ,上昇するまで,追加接種を行う必要があります。
抗体価の結果が出るまでに,もう一つ行っておくことがあります。永いフライトの間,さくらちゃんがパニックにならないために,鎮静剤の飲み薬の量を決めておくのです。実際に,少量から自宅で飲ませていただき,丁度良く効く量を確認しておきました。
幸い,抗体価は十分上昇していました。英文の検疫証明書,健康診断書,抗体価の証明書が整い,Nさんとさくらちゃんはドイツへ旅立ちました。
届いたエアメールには,Nさんとさくらちゃんが無事にドイツに到着し,元気にしているとのこと。
いろんな人がいて,いろんな犬がいて,いろんな事情があります。そこには,いつも幸せばかりがあるとも限りません。だから,幸せになろうとする家族の背中を押すことのできる時,良かったなあと思います。
どんなに性格がきつくとも,Nさんにとって,さくらちゃんは大切な家族。何があっても,これからもずっと一緒に。
それはそうと,・・・,
あんまりドイツの先生困らせちゃだめだよ,
さ・く・ら ちゃん!!