いばらの道
Aさん宅のひめちゃんは,2歳のアメリカンショートヘア。アメリカンショートヘアは,比較的太りやすいことが知られていますが,やはりひめちゃんも,肉感的なタイプ。カロリーを抑えた減量用の処方食で,体重管理をしています。
ある日のこと,食事を買いに来院されたAさんが,
“ひめったら1回の食事に2時間もかかるの。どこか具合でも悪いのかしら”
と心配な様子。
お話では,ふだんの生活に異常は無いものの,毎日長時間のお食事だということでした。
猫は,もともと小さなネズミが主食で,胃袋は小さく,少量の食事を頻回に食べる動物です。多量に食べると吐いてしまうことがあります。
体重が適正で,健康状態に問題が無い場合は,ドライフードをおき餌にして,気の向いた時に食事というスタイルも悪くは無いでしょう。
ただし,肥満の猫ちゃんや糖尿病の猫ちゃんでは,血糖値を安定化させるために決まった時間での食事が望ましいです。減量に取り組んでいるひめちゃんには,30分程度で食事は下げていただくように,お願いしました。
4ヵ月後。
食事を買いに来院されたAさんが,困り顔で,
“ひめったら,私の手からじゃないと,ご飯食べないんです。”
“それは,ずい分とお姫様待遇ですね。でも,飼い主冥利につきるのでは?”
“いいえ,30分もかかるんですよ。毎食,毎食。ほんとに疲れちゃいました。”
“30分ですか!?それは大変。で,ひめちゃん痩せました?”
“・・・”
どうも,30分以内に食べさせなくてはと,必要以上のカロリーを,一生懸命ひめちゃんに与えているようです。今度は食事量を7割ほどに減らしていただくことにしました。
愛するほどに,減量の道は,いばらのようです。