感服
Yさん宅のフクちゃんは,11歳の雄猫です。
10日ほど前から食欲が無く,下顎の皮膚から分泌物が見られるということで来院されました。
歯石が重度なため,歯根に細菌感染を起こし,皮膚から排膿していると考えられました。
化膿止めの薬で一時的に症状を抑えることができても,原因となっている歯を除去しなければ再発する可能性が高く,完治には全身麻酔下で抜歯が必要なことをお話しました。
Yさんは,フクちゃんのために最善の処置を希望されました。
フクちゃんは処置後,すぐに食事を取れるようになり,3日後に退院となりました。
“しばらくの間,化膿止めを飲ませてください。歯茎が安定するまで,軟らかい缶詰を与えてください。”という退院後の指示に,
“フクや,お前も老老介護じゃなあ。”
と,いつも小気味良く,少しブラックな笑いを繰り出すYさんです。
“元気になって本当に良かった。ありがとうございました。雑種で血統もない,こんな猫ですが,私達老夫婦には楽しみを与えてくれる猫なんです。”
と,しみじみとおっしゃいました。
“品種や血統はただのラベルです。フクちゃんはYさんの大切な家族で“Y家のフクちゃん”ということが一番大事なんです。それで十分じゃないですか。フクちゃんは,本当に優しい良い猫ですよ。”
“なるほど,そうですなあ・・・。”
“ところで看護婦さん,この間もらった私の後期高齢者の保険証はフクちゃんに使えますか?”
またスタッフを大笑いさせて,帰っていきました。
どんな時も前向きで,笑顔の花を咲かせていく,懐の深い凄い人。
感服です。
今日も愛妻と愛猫の介護を続けているYさんに。