メ○ボ
Dさん宅のクルミちゃんは2歳のメスのうさぎさん。
お腹が張っているということで,来院されました。
診察台でみてみると,たしかにお腹だけがアンバランスに大きいです。腹囲の膨満は,腹水,臓器の拡大,腹腔内の腫瘤などの要因でおこります。これらの病気を鑑別するため,X線検査と超音波検査を行いました。
X線検査では子宮の拡大がみられ,超音波検査では拡大した子宮腔のなかに液体がたまっていることが分かりました。
クルミちゃんは,子宮水腫または子宮蓄膿症の状態にあり,卵巣・子宮摘出が最も適切な治療法と考えられました。
さて,うさぎさんの手術では,犬や猫と比べ麻酔のリスクが高いです。第一に気管挿管が困難なため,人工呼吸が難しいこと。草食動物であるため薬剤の代謝能力が高く,麻酔薬の用量を多く必要とし,結果として麻酔安全域が狭くなること。そしてあらゆるストレスに弱いためです。
私は,うさぎの麻酔の危険性を説明する際に,犬や猫の麻酔による死亡の確率が5000~1万頭に1頭とすると,最低でもその10倍は,つまり500頭から1000頭に1頭はあると話しています。
そのためうさぎの麻酔では他の動物に比べ10倍気を使い,処置後は麻酔の神様に感謝なのです。科学的ではありませんが,うさぎを診れば診るほど処置後の感謝の気持ちが強くなります。
2ヵ月後Dさんの決心がつき,手術をおこなうことになりました。が,体重を測ってビックリ。350グラムも増え,3.8kgになっています。腹囲もさらに大きくなったように思います。
“子宮の拡張が進んでいるのかもしれませんね。”といってお預かりしました。
細心の注意をはらいクルミちゃんに麻酔をいれ,お腹を開けると,
“ヌ,ヌ,ヌ,これは・・・”
確かに子宮の拡大が重度ですが,それ以上に脂肪の付着がすごいのです。拡大し薄くなった子宮を慎重に扱いつつ,子宮間膜の多量の脂肪に手間取り,通常の倍以上の時間をかけて,無事終了しました。
術後の体重を測って,またビックリ。2ヶ月前の体重より重いではないですか。
さては・・・。
お迎えにきたDさんに
“手術で万が一もあるからと,好きなだけ食べさせませんでしたか?”と伺うと
“とってもよく食べるんです!!”とのこと。
うさぎの食事量は,ペレットの場合,体重の1~2%が適切な一日の量で,それ以上を与えると肥満や消化機能の低下を招きます。ペレットを少なく与え,牧草を制限せずに与えるのが良いでしょう。
クルミちゃんのアンバランスなお腹は,今後の食事管理次第のようです。