連帯感
いくら食べても太らないなんて,ちょっとうらやましい気がするのは,私だけではないようです。
Sさん宅のポン太ちゃんは,長毛の雌猫ちゃん。もう11歳になりますが,ブラッシングが嫌いで,若い頃からあちこちに毛玉ができてしまいます。
そこで年に一度は鎮静剤を投与して,毛玉をとる処置を行っているのですが・・・。
“あれ,ずい分体重が減っていますよ。何か変わった様子は無いですか?”
今日も毛玉とりの処置のために来院されたのですが,もともとスリムな体型のポン太ちゃんの体重が,600gも減っています。
Sさんに特に心当たりはない様子でしたが,詳しく調べることになりました。
血液検査,尿検査,ホルモン濃度測定の結果,ポン太チャンは甲状腺機能亢進症であることが分かりました。
甲状腺機能亢進症とは,高齢の猫ちゃんに多くみられるホルモン疾患のひとつです。甲状腺が癌や過形成などの変化を起こし,甲状腺ホルモンを過剰に分泌するために,体重減少,多食,食欲不振,脱毛,多飲多尿,下痢,嘔吐など実に様々な症状が見られます。一見,よく食べてよく飲んで,よく活動するので,健康だと思われていることが多い疾患です。
治療は外科的には腫大した甲状腺の摘出が,内科的には抗甲状腺薬の投薬が行われます。
ポン太ちゃんは,甲状腺が触知できないため,まず抗甲状腺薬の投与を行うことになりました。
“お薬でのコントロールがうまくいくと,体重も増えてきます。定期的に血液検査を行うことで,副作用は回避できますから,頑張って飲ませてくださいね。不謹慎ですが,食べても太らないなんて,ちょっとうらやましいんですけど・・・。”
とても頷いているSさんと当院の看護師に,連帯感を感じつつ,自分のお腹をなでてみました。
ただいま成長中!!