希望
“先生,さっきのワンちゃんいくつになるんですか?”
待合室で一緒になったリキ君の様子をみて,Hさんが言われました。
“もうすぐ17歳です。もう殆ど体も動かないので,毎日点滴して,食べさせてもらっているんですよ。”
“すごーい,うちの子もあんなに頑張れるかしら。なんだか希望が持てたわ。”
Tさん宅のリキ君は16歳のシーズー犬。半年ほど前から殆ど動かなくなり,最近では食欲も無く,夜鳴きがひどく,Tさんは看護でへとへとになって来院されました。
リキくんは心臓が丈夫な他は,白内障,関節炎,歯石,腸炎,胆管炎があり,脳の老化がだいぶ進んでいるようでした。
ご相談の末,しばらく入院して治療を行うことになりました。
リキ君は,はじめ血便と吐き気がみられましたが,日に日に状態が良くなり,口の中に食事を入れてあげれば,食べるようになりました。
それから3ヶ月,現在はTさんが毎日,自宅で点滴を行い,高カロリーの食事を口に入れてあげ,お薬を飲ませて下さっています。調子が良い時には,一人で歩いて食事を食べてくれるそうです。元気な時には,ずいぶん力強くワンワン鳴いて,Tさんが寝不足の時も多いそう。
“3ヶ月前はもう駄目だと覚悟してお墓まで探したのに,こんなに元気で,・・・”とTさん。
“嬉しいやら眠れないやらで,複雑ですね。”
Tさんとリキ君。その姿に希望を感じる人がいます。いつまでも頑張って欲しい,そんな思いを胸にしまって,Tさんの背中を見送りました。