侍
痛みをぐっとこらえ,愛する人には笑顔を見せる。それは,現代の侍なのかもしれません。
朝一番に来院されたのは,Sさん宅のシェルティーのシェリーちゃんでした。
前夜にぐったりとしたため,千葉市獣医師会の夜間緊急診療制度を利用し緊急治療の後,本日朝一番に来院されました。
“昨夜は立ち上がれなかったんです。もう駄目かと思ったんだけど,朝になったら立ち上がって,急いで連れてきたんです”とSさん。
そこに,前夜診てくださった先生からお電話がかかりました。昨夜は横臥,虚脱,高熱の状態にあり,抗ショック療法を行ったとのこと。極めて危険であったので,万が一のことを考え,ご家族と一緒にいてもらい,明日かかりつけの病院に直ぐ行くように指示されたとのことでした。
今,シェリーちゃんが立ち上がっている様子を伝えると,非常に驚かれました。その驚きの様子からこれはただ事ではないと,あらためてシェリーちゃんを見てみると,・・・平然としています。
本日は体温も平熱となり,本人はひょうひょうとした顔つきをしていますが,それは昨夜の治療のおかげであり,何か大きな疾患が隠れているに違いありません。直ぐに精密検査を行うことになりました。
シェリーちゃんは各種検査の結果,重度の子宮内膜炎から腹膜炎を併発し極めて危険な状態であることが分かりました。
直ぐに入院となり,点滴などの内科的治療により状態を整え,翌日手術を行いました。開腹すると腹腔内の浸出液が,どっと創から出てきました。私と看護師は顔を見合わせ,“さっき面会の時にシェリーちゃん,しっぽ振っていたよね。”
シェリー,あなたは侍に違いない。マスクの中でつぶやきました。
一ヵ月後,Sさんが元気なシェリーちゃんを連れて来院されました。
“本当に嘘みたいです。シェリーがこんなに元気になるなんて”と笑顔のSさん。
“あのお腹で,お母さんの顔を見てしっぽを振ることが,信じられません。”と私。
動けなくなった夜,適切な治療をして下さった先生がいなければ,シェリーちゃんが助かることは無かったでしょう。獣医師の連携とSさんの熱意,そしてシェリーの侍魂が,良い結果を導きました。
夜間診てくださったドクターに感謝して,今夜は,うまいお酒が飲めそうです。
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