安全?ピン
Nさん家のハッピーちゃんは,とっても元気な男の子のパピヨンです。予防接種や去勢手術などで,少々痛い思いも経験しているはずですが,何故か病院が大好き。近くまで来ると,うれしくてリードを引っ張りながら病院に入ってきてくれます。
そんなハッピーちゃんが,今日も喜んで来院しましたが,ちょっと様子が変です。排尿時にキャンと強く鳴いたそうです。
排尿痛があるので,まず膀胱の超音波検査をしてみると,もやもやと嫌な影があります。結石が尿道を閉塞していないかレントゲン検査を行いました。
すると・・・。ありました,異物が。
何故か胃の中に。形状から安全ピンのようです。
突然,ハッピーちゃんが真っ赤な尿を大量にしました。
Nさんはそれを見てびっくり。“あの,このピンのせいで血尿になるんですか?”
いえ,別の問題です。このピンはハッピーちゃんが飲み込んだために胃の中にあり,症状が出るとすれば嘔吐や下痢などの消化器症状。血尿は,泌尿器の問題で,もしかすると血液の問題かもしれませんが,ピンとは別と考えてください。
尿検査により特定の結晶が多量に出ていることが分かりました。幸い結石はなく,尿道閉塞もありませんので,結晶産生を抑制するための療法食主体の治療をすることになりました。
それで,・・・。一方の安全ピンのほうですが,針がガードから外れており,安全でなくなっています。これでは吐かせることも出来ず,相談の結果,定期的にレントゲン検査でおっていき,排泄されれば問題なし,消化器症状が出た場合には麻酔下で処置をすることとなりました。しばらく便の中を隅々まで観察していただく必要があります。
翌日,Nさんからお電話がありました。
“でましたー,先生。ウンチと一緒にピンが出てきました。よかったわ。”
血尿はまだ止まってはいませんが,その朗らかな声に私も一安心。少なくとも問題のひとつは解決です。
ハッピー,しばらく処方食の他は口にしては駄目だよ。もちろん安全ピンも。今回はセーフだったけどね。