いいご飯?
寒くなると猫に膀胱炎が多く発生することが,よく知られていますが,最近では特発性の膀胱炎が一年中みられるようです。膀胱炎を起こすと,何度もトイレに行ったり,赤い尿がみられたり,いつもと違う場所で排尿をするといった症状がみられます。中でも最も致命的な症状に,尿道閉塞があります。膀胱内の炎症産物や結晶が塊となって尿道を塞いでしまうために,何度もトイレに行くが殆ど尿が出ず,徐々に尿毒症が進行し死に至ります。
膀胱炎から尿道閉塞に至るのは,雌猫ではまずみられず,雄猫ばかりですが,それは尿道が細くて長いために,炎症産物が詰まりやすいことが知られています。
治療は,尿道閉塞を解除することが第一で,その後十分な輸液療法により尿毒症の治療を行います。そして再発を防ぐために,膀胱炎の原因に対応した適切な食事療法が,一生欠かせません。
Kさん宅のクロちゃんは,キジの雄猫。数年前に尿道内を砂粒が閉塞し,急性腎不全で危険な状態となりましたが,一命をとりとめ,以来処方食による食事管理を継続しています。
定期的にお食事を買いに来院されるKさん。いつもエコバッグをお持ちになり,とっても楽しい話を聞かせてくれる素敵なおばあちゃまです。Kさんの元気な姿とお話を,毎回楽しみにしています。
先日いらした時のこと・・・
“おじいさんたら,餌なんて残り物でも何でもいいって言うんだけど,またあんなことになったら大変。クロが苦しんでいた時は,私も死ぬくらい辛かったわ。実はね,おじいさんよりクロのほうがいいご飯食べてるのよ。おじいさんは知らないけど。うふふふ。”
茶目っ気たっぷりのKさんのお話に一同大笑い。
微妙な夫婦愛,改めて思い返すと,ちょっと怖い気もしますが・・・。