imagine
“おっぱいが凄く腫れているんですが,妊娠でしょうか?”
“妊娠するような心当たりがありますか?”
“・・・うーーーん。”
Wさん宅のモモちゃんは,2歳のメスのミニチュアダックスフント。最近,乳腺が大きく腫れているのにきづいたとのこと。お気に入りのクマさんのぬいぐるみを大切に抱え込み,取り上げると,家中を探してまわるそうです。発情出血が2ヶ月ほど前にあったということでした。
“偽妊娠といって,わんちゃんでは,発情出血のあと出産の時期にあわせて,妊娠していないのに,乳腺が張ってきたり,乳汁が出ることもあるんですよ。生理的なもので,病気ではないです。ぬいぐるみを抱え込むのも,モモちゃんがその気になっているんでしょう。人でいうと,想像妊娠?そのようなものです。”
“まあ,モモったら・・・”
何故か照れくさそうなWさんです。
“病気ではありませんが,発情出血があるたびに,毎回想像妊娠して,ぬいぐるみを抱え込むようだと,モモちゃんの心に与える影響は小さくないですよね。不妊手術をおこなうことで,このようなストレスはなくなりますよ。”
“先生,いつ手術したらいいかしら。明日でもいいかしら。”
決断が,めちゃくちゃ早いWさんです。
“乳腺の腫れが引いてからのほうが,乳腺を傷つけるリスクがなくなります。3週間程度で偽妊娠が終わる子が多いので,1ヵ月後くらいに処置を行ったらどうですか? あまり待ちすぎると,次の発情が4ヵ月後に来てしまいますからね。”
妊娠でも病気でもないことに,安心されたご様子のWさんが,モモちゃんと待合室にいると。
“あら,妊娠してるの?”
診察を待っているSさんが,声をかけられました。
“違うんです・・・。”
やっぱり照れくさそうなWさんに。
“まあ,立派ねぇ”
としみじみ感心しているSさん。
“ですねぇー。”と相槌打ってる看護士達。
なんだかおかしく,皆で笑う中に,きょとんとしている立派なモモちゃんがいました。