スロースタート
Hさん宅の姫ちゃんは,2歳のミニチュアダックスフントです。初めての妊娠に,家族の期待と不安が高まりますが,予定日をはるかに過ぎても,まったく陣痛の気配なし。当の本人はひょうひょうとしています。
一頭の胎児はどんどん大きくなり,自然分娩は極めて困難と考えられ,帝王切開となりました。
幸い血液検査では異常がなく,処置も順調,無事に大きな立派な新生児が誕生し,姫ちゃんも麻酔から回復しました。
ところが,この大きな赤ちゃん,いまいちやる気が出ません。ないたり動いたり,元気な様子ですが,お母さんのおっぱいには,知らん顔。そして,姫ちゃんはというと,我々スタッフに甘えた声をだして,まったく子供に興味なし。お姫さま,あなたの子ですから,ちゃんと面倒見て下さいと乳房におしつけても,ちょっと横目をくれて逃げだす始末。
お迎えに来たHさんも,親子の様子に不安げです。家に帰れば,落ち着きを取り戻し,母性本能がわくかもしれません。それを期待してみましょう。ただ,初産で帝王切開の場合,母性本能がわかず育児放棄をする場合もあります。もし姫ちゃんが子育てを放棄したままなら,Hさんが母親にならなければなりませんよと。
この親子の運命はいかに・・・
二週間後,元気な子犬が検診にきました。やっぱり巨大なその子犬は,母犬の愛情をいっぱいに受け,すくすくと大きくなっているようです。
“もう姫ったらこの子にべったりなんですよ。私たちが手を出すと怒るんです。今日も連れて来るのが大変でした。”とHさん。
つい最近,この大きな坊やが,初めてのワクチン接種に。近況はというと,もちろん乳離れの方もスロースタートのようでした。