本心
“先生,ふとした拍子に本心って分かるのね。私この間分かっちゃったの”
“えっ,何があったんですか?”
クロラブのライムちゃんの予防接種後,待合室でKさんが,いたずらな笑顔でおっしゃいました。
“この間ね,娘が孫連れて家に来たのよ。ライムが出迎えに玄関まで跳んでいったの。そしたら,娘ったら,さっと子供を隠すのよ。わたし,その瞬間サーっと冷めちゃったわ。ライムが何かするわけ無いじゃない。もうその瞬間,孫よりライムが大切って分かったの”
“そんな事があったんですか。お嬢様の気持ちも分かる気がします。母親の立場としたら,当然かもしれませんよ。”
“娘の気持ちも分かるんだけど,でもやっぱり,ライムが大切って思っちゃった。”
“で,今は仲直りされたんですか?”
“もう来るなって言ったの。そしたら,来る前に必ず電話して確認してから来てるわ。ライムが家の中にいるかどうか”
お嬢様にとっての子供は,もちろん何より大切な宝でしょうし,Kさんにとっての大切な存在は,今は何よりライムちゃんなのですね。
朗らかに言い切ったKさんの瞳が,とても輝いて見えたのは,一人と一頭の母としての自信なのかもしれません。